Masuk『気配を消すってことはさぁ、知能が高くて力もあるってことだよね? 普通の魔物じゃないってことかな……』
『一応、気をつけてくださいね……でも、レイニー様なら大丈夫だと思いますけど!』
随分と、過剰評価をしてくれてるけど、俺はこの世界に来たばかりで……不安なんですけど。レイニーは、あーちゃんの言葉に内心でツッコミを入れた。
♢悪魔子爵ダイモン近辺の探索をすると、遺跡のような場所を発見した。そこには小さな祭壇があり、その祭壇には祀られているのか封印されているのかは不明な場所があったが、それが開けられていた。その光景は、レイニーの好奇心を刺激し、同時に不穏な予感ももたらした。
あぁ……ここで何かをしていたのか〜? うぅーん……気配の性質が魔物ではなく、遥かに知能が高い……。それに悪意を感じるという事はぁ〜……悪巧みをしてるってことかぁ〜。レイニーは、その場の状況を推測した。
気配を消してもバレバレなんだけどね、悪意に害意と殺意を感じるし。レイニーは、相手の意図を完全に読み取っていた。
「あのさぁ〜ここで、なにをしてたのかな〜?」
レイニーは、殺意のある方へ声を掛けた。その声は、どこか挑発的だ。
祭壇の陰からディアブロとは違い、人型で角が生えていかにも悪魔という者が現れた。雰囲気とオーラの感じからしてディアブロの放つ悪魔のオーラをまとっていた。その姿は銀色の長髪が光を受けてキラキラと輝き、深紅の瞳が鋭い光を放つ。高級感あふれる黒と金の貴族衣装は、歩くたびに優雅に揺れ、豪華な装飾が一層彼の威厳を際立たせている。浅黒い肌には冷たい光が反射し、頭に生えた曲がった角が漆黒に光る。まさに高貴な悪魔の子爵といった風貌だ。その存在感は、見る者を圧倒する。
その悪魔が一瞬の沈黙を破り、低く冷ややかな声で話し始めた。
「……全く、見て見ぬふりをしてその場を離れてくれればよかったのに……しかし、見つかってしまったからには、仕方ありませんね。直ぐに死ぬので、貴様たちに名乗る必要はありませんが、私は悪魔の子爵ダイモンと申します」
その言葉は、まるで氷の刃のように鋭く、周囲の者たちに恐怖と敬意を同時に抱かせるものだった。彼の姿は、まさに圧倒的な存在感と威厳を放ち、誰もがその支配力に屈するほかなさそうな感じだが……周りには俺とエリゼにあーちゃんしかいない。レイニーは、冷静に状況を分析した。
うぅーん……どうやら俺たちは、死ぬらしいぞぉ? あーちゃんが焦ってないし、キケンな存在ではなさそうだけど。それに、あーちゃんと比べれば格段に格下だと分かる。レイニーは、ダイモンの脅威度を即座に判断した。
「伯爵様からお受けした、大切な任務を邪魔をされて苛立っているのです。さっさと死になさい……黒炎弾!」
ダイモンが放った魔法は、黒い炎の球体でファイアショットが黒炎になったような魔法だった。だが黒炎は禍々しく、ただ燃えて終わりという訳ではない。
おっと……あーちゃんが放ってきた魔法の、だいぶ下位の魔法だなぁと見せかけて強かったりして? シンプルな魔法が強かったりするし。レイニーは、油断なく構えた。
確実に黒いの炎の塊が俺をめがけて飛んできた。その炎は、不気味な光を放ちながら迫る。
……あ、うん。これ、見た目通りの下位の魔法だね……。フッと息を吹きかけて消し去った。その様子を見てダイモンは不思議そうな顔をしていた。
「貴様、何をした? 黒炎弾だぞ! 人間を焼き尽くす地獄の苦しみとともに、魂ごと焼き尽くす高位魔法だぞ!」
ダイモンが怒り狂った表情をして怒鳴ってきた。その声には、信じられないという感情が混じっている。
「その魔法よりも、もっと強力な魔法を受けたことがあるしなぁ〜」
レイニーがそう言うと、背中に背負われていたあーちゃんがビクッと反応をした。
「……いったい何の話をしているのですかね。そのような魔法を放てるのは上位以上の悪魔ですよ、その様な魔法を受けて無事で済むわけがございません。そんなことはありえませんが、もしも本当だとして上位以上の悪魔と対峙をして、ここに無事に存在できているわけがないでしょう……」
話をしていたダイモンが、急に目を閉じ黙り頷いた。すると雰囲気が変わり、殺意が強まった。
「キケンな人物と判断されたようですな。今、殺せとの命令が下りました」
ダイモンがそう言うとスッと消え、エリゼの背後に現れた。その動きは、まるで影が移動するかのようだ。
「きゃっ!! なに? え!?」
エリゼが悲鳴を上げた。その声は、恐怖に震えている。
♢仲間のために「きゃっ!! もお、離しなさいよー! きゃっ!! 痛いじゃないのぉ……っ!」
エリゼが腕を捕まれ、反対の手でエリゼの頬に爪を当てられた。その声は、痛みと恐怖に震えている。
エリゼには簡易的な結界を張っていたので、完全に油断をしていた。低級の魔物しか現れていなかったし、目の前の悪魔も大したことがなかったので結界の強化をしていなかった。よく思い出せば……悪魔の爪は結界やバリアごと切り裂けると言っていたよな。レイニーは、自分の甘さを悔やんだ。
「俺の仲間を傷つける者には、地獄の苦しみが待っていることを教えてやる。悪魔だろうが、神だろうが……関係なくね」 その言葉とともに、黒炎球はさらに大きくなり、周囲にいる者たちの心に恐怖の影を落とし続ける。その恐ろしい光景は、まさに闇の魔法の真髄を見せつけるものであった。「レイニー様、デカすぎます……それ、黒炎弾ですよね?」 ディアブロが確認をした。その声には、焦りと、わずかな怯えが混じっている。 はい? 黒炎弾? 知らないなぁ〜。ディアブロの放ってきたモノをただイメージをしただけだしぃ。レイニーは、あっけらかんとした顔で首を傾げた。「知らない〜黒炎球って感じ? 知らないけど……」「我も、存じ上げませんが……その威力は……ここにいるだけでもダメージを受けるほどです」 ディアブロの声は、震えていた。「あーはいはい。威力を落とせば良いんだね……心配性だなぁ……ディアブロは〜」 レイニーは、ディアブロの心配を軽くあしらった。「は? ディアブロ様……え? あのディアブロ様?」 ダイモンが僅かにディアブロという名前を耳にした。その顔は、驚愕と、深い絶望に染まっていた。 レイニーが魔力を抑えシューと黒炎球が小さくなり、ビー玉程度に抑えられ、レイニーが指で弾くとゆっくりとダイモンへ向かっていく。見た目は弱々しく弾き返せそうで、避けるのも簡単そうに見えた。その小さな黒炎球は、しかし、確かな殺意を宿していた。 ダイモンがニヤッと笑いシールドを張ったが、黒炎球がシールドをミシミシと音を立て貫通してきた。転移を使い逃げるが追いかけてくる、徐々に迫る恐怖を味わった。その音は、ダイモンの心の奥底にまで響き渡る。「な……なんなんですか? あれ」 ダイモンの声は、もはや恐怖に支配されている。「あ
「大人しく殺されなさい……」 ダイモンが冷たく囁くように言うと、エリゼが抵抗し動いたからか頬から血がにじみ出てきた。その赤い雫は、レイニーの視界を真っ赤に染めた。 エリゼを傷つけられたという、怒りの感情が溢れ出し、レイニーはエリゼに改めて完全遮断の結界を張った。この結界はこの世界と切り離されているので周りで何が起きようが影響を受けない。だが、何が起きているのか見えず、聞こえず、閉じ込められた感じになってしまう。空間の中に外の風景を投影してストレス軽減をしておいた。レイニーの心には、エリゼへの深い愛情と、ダイモンへの激しい怒りが渦巻いていた。 エリゼの傷は回復魔法が効かないと言っていたので、レイニーのスキルのイメージで治療した。回復ではなく、イメージで元の状態を復元した感じで、治すのとは違う。エリゼの頬の傷は、みるみるうちに消えていった。 さて、コイツをどうしよう……? 大切な仲間のエリゼを傷付けた大罪人を。背負われていたあーちゃんが、いつの間にか擬態を解き、ディアブロの姿で現れていた。その漆黒の翼は、闇の中で静かに広がる。「主よ……どうか怒りをお沈め下さい」 現れたディアブロが怯えた様子で跪いてきた。その声は、震え、レイニーの放つ怒りのオーラに怯えているようだ。「なんでさ? 仲間を傷付けられて許せるわけ無いでしょ。なに? 同族が殺されるのが嫌なわけ?」 レイニーは、ムスッとした表情をしてディアブロに言った。俺の仲間が傷つけられて許せっていうの? それで、自分の同族はゆるせって? あり得ないしっ。レイニーの言葉には、ディアブロへの不満と、エリゼへの強い庇護欲が込められている。「あんなヤツは、どうでもいいですが……。その力で攻撃は……マズイです。辺りが滅びます」 ん!? あ、同族をかばう気はないらしい。『あんなヤツ』とか言ってるし。ディアブロの言葉に、レイニーは少し驚いた。「ん? ディアブロには関係ないことじゃないの? 不死なんだろ?」「
『気配を消すってことはさぁ、知能が高くて力もあるってことだよね? 普通の魔物じゃないってことかな……』『一応、気をつけてくださいね……でも、レイニー様なら大丈夫だと思いますけど!』 随分と、過剰評価をしてくれてるけど、俺はこの世界に来たばかりで……不安なんですけど。レイニーは、あーちゃんの言葉に内心でツッコミを入れた。♢悪魔子爵ダイモン 近辺の探索をすると、遺跡のような場所を発見した。そこには小さな祭壇があり、その祭壇には祀られているのか封印されているのかは不明な場所があったが、それが開けられていた。その光景は、レイニーの好奇心を刺激し、同時に不穏な予感ももたらした。 あぁ……ここで何かをしていたのか〜? うぅーん……気配の性質が魔物ではなく、遥かに知能が高い……。それに悪意を感じるという事はぁ〜……悪巧みをしてるってことかぁ〜。レイニーは、その場の状況を推測した。 気配を消してもバレバレなんだけどね、悪意に害意と殺意を感じるし。レイニーは、相手の意図を完全に読み取っていた。「あのさぁ〜ここで、なにをしてたのかな〜?」 レイニーは、殺意のある方へ声を掛けた。その声は、どこか挑発的だ。 祭壇の陰からディアブロとは違い、人型で角が生えていかにも悪魔という者が現れた。雰囲気とオーラの感じからしてディアブロの放つ悪魔のオーラをまとっていた。その姿は銀色の長髪が光を受けてキラキラと輝き、深紅の瞳が鋭い光を放つ。高級感あふれる黒と金の貴族衣装は、歩くたびに優雅に揺れ、豪華な装飾が一層彼の威厳を際立たせている。浅黒い肌には冷たい光が反射し、頭に生えた曲がった角が漆黒に光る。まさに高貴な悪魔の子爵といった風貌だ。その存在感は、見る者を圧倒する。 その悪魔が一瞬の沈黙を破り、低く冷ややかな声で話し始めた。「……全く、見て見ぬふりをしてその場を離れてくれればよかったのに&he
気を良くして洞窟の奥に足を進めていくと、数匹のゴブリンに遭遇した。前方に現れると横穴からも現れて完全に囲まれた。まあ、知ってたけど……。レイニーは、ゴブリンの存在を事前に察知していた。 ゴブリンもこん棒を手に持ち、襲い掛かってくる。まるで軍に入りたての少年兵の様な大振りで、隙だらけで簡単に避けられるし、倒せる。レイニーは、初めての剣術を使いゴブリンの首を斬り落とした。その剣は、正確にゴブリンの急所を捉えた。 エリゼが実戦を見て、血や首を切り落としたところを見て引いてると思いきや……「うん。今度は、キレイな剣術だったよ♪ さすが、お父さんが認めるだけあるねっ」 エリゼは、ニコニコの笑顔で誉められた。人型の魔物でも抵抗がなさそうだね? 俺は少し抵抗があるんだけどなぁ……。レイニーは、エリゼの順応性に驚きつつ、自身の内心の葛藤を感じていた。♢地下湖と古びた扉 さらに洞窟の奥に進むと、小さな地下湖が現れた。その水面は薄い霧がかかっており、松明の光が反射して幻想的な光景を作り出している。幻想的で不気味にも感じる光景で、息を呑む雰囲気だった。その美しさと不穏さが混在する空気は、レイニーの心を掴んだ。「わぁ……キレイだけど……不気味だね」 エリゼも同じ事を感じていたみたい。その声には、驚きと、わずかな恐れが混じっている。「うん。幻想的でキレイだけど、魔物が現れそうな感じがするね〜」 レイニーは、警戒しながら呟いた。 湖のほとりを見渡すと、冒険者たちが置き去りにした古びた装備や道具が見え、ここが多くの者にとっての休息の場でもあったことがうかがえるし、ここで襲われたとも考えられる。休憩をしているところを襲われ、荷物や装備品をそのままに逃げたのかもね……。その光景は、過去の出来事をレイニーに想像させた。「冒険者の装備品が、不気味に見えるね〜。周りに魔物の気配は無いけど、気を付けないとね」 レイニー
その岩の割れ方は、まるで誰かが強大な力で割ったようだった。こんなパワーを持つ人間を見たことも聞いたこともない。もし、そんな人間がいたら軍が見逃さずにスカウトしているだろうし。それか、冒険者の中にいるのかもしれない。レイニーは、その圧倒的な力に想像を巡らせた。「ここから入れそうだよ?」 エリゼがニコッと言ってきた。さすが、冒険者志望だね。しかも責任回避をして俺に行かせようとしているしぃー。俺なら何でも許されると思っているのか? 今のところは許されているけどさ〜♪ レイニーは、エリゼの行動に、面白さと、わずかな呆れを感じた。 まあ、こんな面白そうな所を見つけたら、誘われなくても行くでしょ。「一緒に行く?」 レイニーは、エリゼならついてくると分かってて笑顔で聞いた。「……うぅ……こんな所で、わたしを一人にするの?」 エリゼがレイニーの服をそっと掴み、不安そうに見つめてきた。その瞳には、心細さが滲んでいる。「エリゼなら大丈夫じゃない?」 レイニーは、エリゼの反応が可愛くて……ついついイジワルなことを言ってしまう。「いやぁ。大丈夫じゃなーい。一緒に行くぅー!」 可愛い頬を膨らませたエリゼが言ってきた。「だよねぇ〜」「うん♪」 二人で顔を見合わせて頷き、ニコッと笑った。このパーティでは、エリゼが止める役だったが、俺と一緒にいることで影響を受けてしまっていて、今では止める人がいないので危ないかもしれないな。レイニーは、今後のエリゼとの冒険に、若干の不安と、それでも期待を抱いた。♢洞窟の探索 洞窟に足を踏み入れると、まず湿った空気が肌にまとわりついてくる。冷たく湿った石の壁には、所々に苔が生え、ゆっくりと滴り落ちる水滴の音が洞窟内に響き渡る。洞窟内は薄暗く、アイテムボックスから取り出した松明の明かりがぼんやりと前方を照らす。壁に空いた亀裂や足元の不規則な石の配列が、ここが自然の力でできたものであることを物語っていた。その光景は、
軽食を摂り、少し元気が出たのでアイテムボックスから剣を取り出しエリゼにも渡した。実力は少年兵よりは高いから、少しは頼りになると思う。……お遊び程度の魔物しかでてこないと思うけど。この辺りの魔物の反応が、低級の魔物の反応しか無いし。これなら二人で楽しみながら山頂に向かえるかなっ。レイニーは、山の気配を探索し、状況を判断した。「さー、出発しよー♪」「はぁいっ!」 エリゼは、元気いっぱいに返事をした。 小さい魔物が現れると、二人で顔を見合わせてニヤッと笑った。「どうする? エリゼも戦いたいんじゃない?」「わたしに倒せるかなぁ〜?」 エリゼはそう言うけど、顔が笑ってるじゃん。しかも剣を構えてるし……。レイニーは、エリゼの興奮を感じ取った。「どーぞー♪」「……う、うん。えいっ!」 エリゼは、シュパッ!と剣を振り下ろし、一撃で魔物を討伐できた。その剣筋は、見事なほどに鋭い。「わぁーい! 倒せた! ねえ、見た?見た?」 エリゼは嬉しそうに振り返り、満面の笑顔で聞いてきた。昨日の森とは雰囲気が違い、不気味な雰囲気もないし。その瞳は、達成感に輝いている。「うん。余裕そうだね〜!」 というか、さすがセリオスの娘で剣の扱いが慣れていて剣がぶれていないし、剣のスピードが早い。レイニーは、エリゼの才能に舌を巻いた。「まぐれだよー」 エリゼは謙遜してるけど、日々の訓練の成果だと思う。これだと、俺の出番が無くても良いのかもなぁ〜接待の魔物の討伐だなぁ。日頃の感謝の気持を込めて、エリゼに付き合おう♪ レイニーは、エリゼの成長を喜び、温かい気持ちになった。「次は、お兄ちゃんね!」「俺は、帰りで良いよ〜。二人で疲れちゃったら、強敵が出た時に困るでしょ〜」 エリゼが楽しそうだったので、今は遠慮しておこうかな。レイニーは、エリゼに花を持たせることにした。「あぁ〜そっかぁ。わかった! 行きは、わたしが頑







